ブレーンの委嘱によって作曲したものが2曲ある。
「恋す蝶」と「かごめの花化粧」である。
「恋す蝶」は私にとって当時慣れない小編成だったこともあり(なんせ私にとってトランペットとクラは4管、打楽器は7人がデフォなので)、色々悔いが残っている作品である。
録音初演であったため、楽譜の修正もできなかった。
そして一年後、ブレーンより再度の委嘱をいただき作曲したのが「かごめの花化粧」。
当然ながら、私としてはこちらが会心の出来である。
・・が、「恋す蝶」はよく演奏されたものの、「かごめの花化粧」は言うなれば鳴かず飛ばずであった。
当時、これは結構悩んだ。
大阪いずみホールの帰りの喫煙所でばったり会った師匠にこのことを話したら、笑いながら一言だけ返されたことを今でもよく覚えている。
「買うのは君じゃないから」
分かるようで実際はいまいち意味が分からなかった。
・恋す蝶」はCDのタイトル曲となったから
・「かごめの花化粧」は中高生に扱いづらいテーマを前面に押し出しすぎたかもしれない
当時の私の分析はこの程度で終わってしまった。
愚かなり。
この時にもう少し考えを深めれば良かったのだが、あれから10年以上も特に何も考えず過ごしてしまった。
愚かなり。
そもそもの話であるが、この業界で生き抜くにためには何が必要なのだろう
①本当に飛び抜けた才能の持ち主
他人の価値観や歴史をぶち壊せるほどのもの。
②何かしらのストーリーの持ち主
容姿なども含む。
③運
私は間違いなく運だけで生きている。
このあたりだろうか。
では、作品が生き残るためには何が必要なのだろう。
①他人の価値観や歴史をぶち壊せるほどの芸術性がある
②背景に何かしらのストーリーがある
③運
人も作品も概ね一致するかと思うが、①の芸術性についてはまぁどうにもならない側面もある。
ただ、資本主義の世界、あるいは多数決の世界で成功するかどうかは関係ない。
多くの人は自身の価値観を壊されることを望んでないからだ。
②の「何かしらのストーリー」はまぁ分かりやすい。狙うのか偶々なのかは置いておいて。
問題は③の「運」である。
実際問題、これが一番大きい。
私は大学院を出るタイミングで吹奏楽コンクール課題曲に選出されたため、その後多少なりとも活動が継続できた。
「絶対に作曲家として世に出てやる」という強い願望があったわけではないけれど・・(当時オケでせっせとバイトしてたしね)。
あれが落選していたら、もう少しマトモな人生であったかもしれないがそれもまた人生。
そして、選出されたその課題曲も「運」である。
最終選考に残った他の作品は素晴らしかった。
あちらが選ばれていたとしても何の不思議もなかった。
その後の作品についても、私の思いなど無縁であり、全て運の名の下に幸不幸が決まっているかな、と思っている。
不満はない。いや、あるな。
ただ、この歳になって今更ながらに思うのが、どの作品についてももう少し「運」をあげる努力をしておけば良かった・・ということである。
誰に見られることのない花であっても、その美しさの価値は揺るがない。
それは真理である。
が。
ツイッターを見ていたら面白そうなものにつられてしまった
この手の本はまず読まないが、見出しにもろにつられてしまった。
加えて、とても低価格な点と、本にしては珍しい返品保証なるものも気になって、ついつい・・ほら、ジャパネッ笑・・だが、めちゃくちゃ面白かった。
正直、私のページを見るような方に “ウェブセールスライティング” というのはやや軸がずれている気もするが、ざっと読むだけでも今後の人生において多少の「運」をあげられるのではないかと思う。
というか、ひょっとしたら若い方は、こういう考え方を先にするのかなぁ。
演奏家になるためには主要なコンクールで賞を取るなど、作曲家になるためには出版社と縁を持つなど。
私が学生の頃はそれが当たり前だった。
しかし最近はインターネット、SNS の発達によって一気に表現方法が変わってしまった。
例えば、ピアノを苦手としながら保育士免許を取った方が、これから保育士免許に挑戦する人のために作った SNSアカウントが、国内主要オケや出版社のアカウントとは比べ物にならないくらい影響力を持っているなど。
(まこと失礼ながら)スケールすらまともに弾けていないのにも関わらず何万人もの受信者がいることを理解するに、やや古いタイプの私は少し時間がかかってしまった。
しかし、自分もまたそうであることを忘れはしない。
私の人生を決めた課題曲は3日で書いたもの。
一番売れている楽譜は一週間で書いたもの。
一年かかって書いたものは累積販売実績が一冊・・。
そんなものである。
運次第とは言うなれど
ぶつぶつと独り言を連ねてしまったが、昔に比べて個人が「運」そのものに干渉できる世の中になってきているのだと、中年を越えて初めて気づいた次第というお話でした。
ここまで徹底的に書かれると、芸術畑の人間であってもさすがに思うことがあるかも。。
なお、作品の質そのものについて勘定していないお話でありますので、その点ご了承くださいませ。