「仕事がないうちに税金の勉強してた方が良いよ」
やる気と希望に満ちた若く有望な作曲家と話していて、私のような齢だけ重ねた駄馬が教示できるのはこれくらい。
私が大学院を修了し、嫌々ながら社会に放り出された最初の一年の収入は、某課題曲公募の賞金オンリーだった。
入賞決定からしばらくして口座に賞金が振り込まれたわけだが、まず思ったのは「一割どこ行った?」。
恥ずかしながら、源泉徴収という仕組みを知ったのはこれがきっかけ。
「税務署に行ったら返してくれる」と知って二重の驚き。
今どきはネット上に情報が溢れているので、まったく何も知らない人はそうそういないと思うが、20年前は誰しもこんな感じで社会に放り出されたのではないかな・・?
まぁ私が大学を人より行きすぎて、同期デビューの音楽家がおらず、この手の話をする機会がなかったというのはあるけれど。
大学の性格によっても大きく違うだろうし。
「節税?細けぇことは気にするな」という意見は肯定も否定もしない。
しかし、フリーとして社会に出たばっかりで仕事がないときに少しでも勉強しておいた方が後々のためだよ・・と過去の私には言いたいなぁ。
とりあえず知っているだけで良い
一部のスターを除いて、駆け出しの頃に税金のことを考えなくて良いのは多少ある。
知ってようが知らまいが、(対策を)しようがしまいが、特に何も変わらないから。
書類揃えて税務署に行けば、行方不明の一割が帰ってくるョ!以上の意味はないのが多くの駆け出しフリーランスの現実
(今はもう税務署に行く必要もなくなったけど)
でも、これすら知らなかったらそれまでだけど。
ちなみに還付金は5年前まで遡れるので、「知らなかった」という人はお早めに・・!
芸事に邁進し頑張って頑張って、やがてどこかのタイミングでぽんと収入が増える。
ハッピーである。
そして翌年青ざめる。
所得税より社会保険料にびっくりするな・・
手取り足取り教えてくれる仲の良い先輩がいるのならそれで良いと思うけど、お金の話というのはなかなかしないもんだし、日本人の性質としてそもそも口にしにくい話題でもある。
とりあえずコレ読んどけ
誰も教えてくれなくても、今の世の中情報はちゃんとある。
その後、気になるところをググれば解のない問題はほとんどない(結局ググるんだけどね)。
「お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください! 」
「貯金すらまともにできていませんが この先ずっとお金に困らない方法を教えてください!」
いずれも、芸術学部卒→税理士という面白い経歴を持つ大河内薫さんの著作。
漫画でさくっと読めるのに、中身は基本的なことをきっちり抑えており充実。
(そもそも税金関係って使ってる言葉が難しすぎて心が折れるんだよ・・)
「お金の教育を義務教育に取り入れたい」とは著者の名刺がわりのセリフ。
お金というものに対する根本的なマインドという観点では、これは本当にお願いしますよレベル。
Amazon Audible なら無料で読めるようです(2023.7現在)。
その根本的マインドの入門として分かりやすいのがこれまた漫画。
一部のネット界隈を賑わせ、モンスター級に売れている一冊。
言ってる一つ一つのことは確実ながらも小さいものなんだけど、それすら考えるのを放棄しちゃうのが音楽家の業だよね・・と。
専門書を深く読むより、入門書を広く浅く読んでる方がいつか役に立つと思う。
知ってるかどうか、気付けるかどうかが全てであって、個別の答えを知ってる必要はあんまりないもの。
話は変わるが、ここ数年、中高生相手に吹奏楽コンクール課題曲の解説する機会を頂くようになって、私は「彼ら彼女らにどうやって理解してもらうか」に全ての労力を費やしている。
気をつけているつもりでも、少し気をぬくと「ドッペルドミナント」とか口にしちゃう。
これは中高生に向かって減価償却とか家事按分といった言葉を使っているレベルであり、いつも猛省がつきない。
おまけ
少し前まで、税金のシステムは「国民から金を巻き上げるために国が小難しくしている」なんて思ってたけど(その側面がないとは思わんが)、「誰も分かりやすく説明できなかった / そんな機会もなかった」というのが実際かなとも思ったり。
コロナが世界に広まり始めたとき、多くの音楽家が助けられた持続化給付金。
この時「雑所得」に翻弄された人は少なくなかった。
この「雑所得」の発端は、確定申告の際の案内係のおっちゃんだった人がほとんどだったと思う。
「あ、じゃあこの欄に書いてくださーい」誰にも悪意なんてなかった。
当時のツイッターで、雑所得難民に対して「自分のやってることを事業だと思っていないのかw」と書いている人がいて、「まぁそれはそうなんだけど・・本当に何も知らないんだよ」と心の中でつぶやいていたことを思い出す。
知らないと疑問にすら思えないからね。